頚部の疾患
🩺 頚部の疾患について
首(頚部)は、頭部を支えながらも大きく動かすことができる非常に重要な部位です。
そのため、加齢変化や外傷、長時間の不良姿勢などにより、頸椎や椎間板、神経に障害をきたすことがあります。
ここでは、代表的な頚部疾患についてご紹介いたします。
■ 変形性頚椎症
加齢や長年の負担により、頸椎の椎間板が変性し、骨棘(こつきょく:骨の突起)が形成される疾患です。
首の痛みやこり感が主症状ですが、神経や脊髄を圧迫すると、手足のしびれ・巧緻動作障害(ボタンが留めづらいなど)・歩行障害がみられることもあります。
■ 頸椎椎間板症
椎間板の弾力が低下し、クッション機能が損なわれることで頚部の痛みや動かしにくさが生じます。
神経根や脊髄の圧迫が軽度な段階であり、姿勢や動作によって症状が変動します。
■ 頸椎椎間板ヘルニア
椎間板の一部が突出し、神経根や脊髄を圧迫することで、頚部痛・上肢のしびれ・筋力低下などを生じます。
比較的若年から中年に多く、自然軽快する例もありますが、重症例では外科的治療が必要となる場合もあります。
■ 頚部神経根症
頸椎の変形や椎間板の突出により、神経根が圧迫される病態です。
首から肩、腕、手指にかけての放散痛やしびれを特徴とし、特定の姿勢や動作で症状が増悪します。
■ 頸椎すべり症
頸椎が前後方向にずれてしまうことで、神経や脊髄を圧迫する疾患です。
加齢に伴う椎間関節や靭帯の変性が主な原因で、慢性的な首の痛みや神経症状を伴います。
■ 頸椎偽痛風(ピロリン酸カルシウム沈着症)
関節内にピロリン酸カルシウム結晶が沈着し、急性の炎症反応を引き起こします。
急な頚部痛や発熱を伴うことがあり、高齢者に多くみられます。頚椎のCT検査で診断されることがあります。
■ 頚髄症(頸椎症性脊髄症)
脊髄が圧迫されることにより、手足のしびれ、巧緻動作障害、歩行のふらつきなどが出現します。
進行性の経過をたどることが多く、放置すると不可逆的な障害を残す場合もあります。早期診断・治療が重要です。
■ 頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)
脊髄の前面を走る「後縦靭帯」が骨化して肥厚し、脊髄を圧迫する疾患です。
日本人に多く、遺伝的素因も関与します。手足のしびれ・筋力低下・歩行障害が主症状です。
■ 頸椎黄色靭帯骨化症
脊髄の後方にある黄色靭帯が骨化して硬くなることで、脊髄を圧迫します。
後縦靭帯骨化症と併存する場合もあり、脊髄症状を呈することがあります。
■ 首下がり症候群(Dropped Head Syndrome)
頚部伸筋群の筋力低下により、頭部を支えられずに前方へ垂れ下がってしまう病態です。
神経・筋疾患や加齢性変化に伴って発症し、姿勢保持や視野確保が困難となります。
■ 環軸椎回旋位固定(Atlantoaxial Rotatory Fixation)
第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)の間で回旋した状態が固定してしまう疾患です。
首の傾きや回旋制限を伴い、小児に多く発生します。整復や固定による保存療法が中心です。
■ 頸椎症性筋萎縮症
頸椎の神経圧迫に伴い、片側上肢の筋萎縮・筋力低下をきたす病態です。
痛みは軽度である一方、筋力低下が主症状として目立ちます。
🔍 診断と治療方針
当院では、レントゲンや超音波検査、必要に応じてMRIなどを用いて原因を正確に診断いたします。
治療は、安静・薬物療法・理学療法・装具療法などの保存的治療を基本とし、神経圧迫が高度な場合には、専門医療機関と連携し、外科的治療を検討します。
患者さま一人ひとりの症状・生活背景に合わせた、最適な治療プランをご提案いたします。
