背中、肋骨部の痛み
🩺 胸椎・肋骨部の疾患について
胸椎(背中の骨)や肋骨は、上半身を支え、肺や心臓などの内臓を保護する重要な部位です。
肺や心臓の問題がない場合、整形外科的疾患の可能性もあります。
ここでは、胸椎や肋骨に関連する代表的な疾患をご紹介します。
🔹 胸椎の疾患
■ 胸椎椎間板ヘルニア
胸椎の椎間板が突出し、神経を圧迫して痛みやしびれを起こす病気です。
胸や背中の痛みのほか、肋骨に沿って痛みが広がることがあります。
腰椎ヘルニアに比べてまれですが、下半身のしびれや脱力を伴うこともあります。
治療:
安静・薬物療法・リハビリで軽快することが多いですが、
症状が強い場合は手術(椎間板摘出術など)を検討します。
早期に診断し、神経の圧迫を取り除くことが重要です。
■ 胸椎圧迫骨折
骨粗鬆症の高齢者に多くみられ、軽い転倒やくしゃみなどでも背骨がつぶれてしまう骨折です。
背中や腰の痛みが急に出現し、動くと痛みが強くなるのが特徴です。
治療:
コルセット固定・安静・骨粗鬆症治療を行います。
痛みが強い場合は、**椎体形成術(セメント注入)**を検討することもあります。
再発防止のためには、骨密度管理と転倒予防が大切です。
■ 強直性脊椎炎
主に若い男性に発症し、背骨や仙腸関節に炎症が起こる病気です。
朝のこわばりや背中の強い張り感、前かがみ姿勢が続くのが特徴です。
治療:
抗炎症薬や生物学的製剤による治療を行います。
■ 脊髄腫瘍・転移性脊椎腫瘍
胸椎の中にできる腫瘍や、他の臓器から転移してくる腫瘍によって、
神経が圧迫されると背中の痛みやしびれ、歩行障害などが生じます。
治療:
MRIで診断を行い、腫瘍の種類に応じて外科的切除、放射線、化学療法を行います。
早期発見が重要で、痛みが夜間に強い場合や進行性のしびれがある場合は早急な受診が必要です。
🔹 肋骨部の疾患
■ 肋間神経痛
肋骨の間を走る神経が圧迫・炎症を起こすことで、胸や脇腹にピリッとした痛みを感じる病気です。
痛みは咳・くしゃみ・深呼吸・体のねじり動作で悪化することがあります。
原因:
姿勢不良、ストレス、帯状疱疹後の神経障害、胸椎の変形など。
治療:
原因に応じて、鎮痛薬・リハビリを行います。
姿勢の改善や体幹の安定性を高めることで再発予防が期待できます。
■ 肋骨骨折
転倒・打撲・咳のしすぎなどで肋骨にヒビや骨折が生じます。
呼吸時や体動時に痛みが強く、深呼吸や笑う動作もつらくなります。
治療:
多くは自然治癒しますが、1か月程度の固定と安静が必要です。
■ 肋軟骨炎(ティーツェ症候群)
肋骨と胸骨のつなぎ目(肋軟骨)が炎症を起こし、
胸の前方に押すと痛いしこりを感じる病気です。
治療:
安静・鎮痛薬・温熱療法で改善します。痛みが長引く場合、血液検査やMRIが必要となる場合もあります。
■ 骨粗鬆症による肋骨骨折
骨密度が低下している高齢者では、軽い咳や捻り動作でも肋骨にヒビが入ることがあります。
骨粗鬆症の一症状として注意が必要です。
治療:
痛みのコントロールとともに、**骨粗鬆症治療(薬物療法・栄養・運動)**を行います。
再発防止には骨の強化と転倒予防が欠かせません。
■ 帯状疱疹(初期の神経痛)
ウイルスの再活性化によって、肋骨に沿って痛みやピリピリした違和感が出る病気です。
発疹が出る前から痛みが始まることがあり、肋間神経痛と紛らわしいこともあります。
治療:
抗ウイルス薬と鎮痛治療を早期に行うことが重要です。
発疹後も痛みが残ることがあるため、皮膚科へご紹介いたします。
🧭 診断と治療について
当院では、問診・触診に加えてレントゲン、超音波、MRIなどを用いて原因を正確に診断します。
胸椎や肋骨の痛みは、整形外科的原因のほか、内科的疾患(心臓・肺など)との鑑別も重要です。
必要に応じて内科や専門医と連携しながら、安全で適切な治療を行います。
