肩の痛み
🩺 肩の疾患について
肩関節は、体の中でも特に動く範囲が広く、日常生活のあらゆる動作に関わっています。
一方で、筋肉や腱、靭帯、関節包など多くの組織が複雑に関係しており、年齢や使いすぎ、外傷などによって痛みや動かしにくさを感じやすい関節でもあります。
ここでは、代表的な肩の疾患についてご紹介します。
■ 肩関節周囲炎(いわゆる五十肩・凍結肩)
加齢や使いすぎなどをきっかけに、肩の関節を包む膜(関節包)や腱板の周囲に炎症が起こり、強い痛みと動かしにくさが出ます。
特に夜間痛や衣服の着脱がつらくなることが多く、痛みが落ち着くまで数ヶ月~1年ほどかかることもあります。
治療:痛みの強い時期は安静や薬物療法、温熱・電気治療などを行い、関節内注射を行うこともあります。
痛みが落ち着いてきたら、リハビリで少しずつ可動域を広げていきます。
■ 腱板断裂
肩の動きを支える「腱板」という腱が、加齢や外傷によって切れてしまう病気です。
夜間の強い痛みや腕が上がりにくい、力が入りにくいなどの症状がみられます。
治療:軽度の場合は、運動療法や注射などの保存療法で改善することもあります。
痛みや機能障害が強い場合は、鏡視下腱板修復術などの手術が検討されます。
■ 上腕二頭筋腱炎
腕の力こぶの筋肉(上腕二頭筋)の腱が炎症を起こす病気です。
前方の肩に痛みが出て、腕を前に上げたり外にひねったりすると痛みが強くなります。
治療:安静や消炎鎮痛薬、腱鞘内注射などで炎症を抑えます。
■ 石灰沈着性腱炎
腱の中にカルシウムの結晶が沈着し、急に強い痛みを起こす病気です。
夜間痛が非常に強く、肩を動かせなくなることもあります。
治療:痛みが強い時期は安静や注射などで炎症を抑えます。
超音波を使って石灰を吸引・洗浄する治療(バルボタージ)で石灰を除去することもあります。
■ 肩関節関節唇損傷(SLAP損傷・バンカート損傷など)
肩の関節を安定させる「関節唇」が、外傷や投球動作によって傷つく病気です。
動かすと「引っかかる」「抜けそう」などの違和感や痛みを感じることがあります。
治療:軽症の場合は筋力トレーニングや動作の改善で安定を図ります。
脱臼を繰り返す場合やスポーツ復帰が難しい場合には、鏡視下での修復手術を検討します。
■ 変形性肩関節症
関節の軟骨がすり減り、痛みや動かしにくさが出る病気です。
進行すると、動かすたびに「ゴリゴリ」と音がしたり、腕を上げにくくなります。
治療:運動療法や注射などの保存療法が中心です。
症状が進行した場合には、鏡視下手術や人工肩関節置換術などの手術を検討します。
🧭 診断と治療について
当院では、問診・診察に加えて、レントゲンや超音波、必要に応じてMRIを用いて正確な診断を行います。
症状や生活背景に合わせて、安静・薬物療法・リハビリテーション・注射療法などの保存的治療を基本とし、必要に応じて手術を検討します。
